WAN-WAN

開発の背景

 新型コロナウイルスは世界中に大きな影響を及ぼしました。この感染対策により、結果的に実験室や研究室に不在の時間が増え装置の管理体制も大きく変化しました。

 例えば装置にトラブルが発生した際には、異常を示すアラームが点灯し同時に大音量でブザーが鳴り響き、インターロックによる装置保護が働くものもあります。しかし、これらの装置も周辺に人がいないと、そもそも装置の異常発生アラームに誰も気が付きません。その結果トラブルへの対応が遅れ、結果的に被害が拡大してしまうという課題が表面化してきました。

 このような問題を解決するためのシステムとしてWAN-WANの開発がスタートしました。

WAN-WANとは?

 WAN-WAN(Wireless Alarm Network for Wide Area Notification)は我々が開発した新しい警報システムです。

 様々な実験装置などのセンサ信号や接点出力など電気的信号を直接読み取り、さらに市販されているスマートスピーカーと連携することで、遠隔地にいる責任者らに電話やメール、パトライトの起動などで素早くトラブルの発生を通知するものになります。

 スマートスピーカーとは近年流行りのAIスピーカーとも呼ばれるもので、代表的なものでは「アレクサ、今日の天気教えて!」で親しまれているAmazon社製や、「OK、Google」で耳馴染みのあるGoogle社製などがよく知られています。

 スマートスピーカーはこれまで、音楽やニュースの再生、テレビやエアコンなどの家電制御としての利用が一般的でした。

 我々はこれを日常的には通常通りのスマートスピーカーとして利用しながらも、いざとなれば警報通知や実験装置等のリモート制御にも活用しようとするものであり、本研究開発では「Amazon Echoシリーズ」を採用し検証を進めています。

WAN-WANの仕組み

 監視対象機器の異常を知らせる信号出力端子をWAN-WANに有線で接続します。(監視対象機器の例:メディカルフリーザー、酸素濃度計など)

 WAN-WANが監視対象機器の異常を検出すると、直ちにWi-Fiを通じてクラウドサーバーに接続され異常発生のアナウンスがスマートスピーカーから流れます。同時にスマホへのメール送信や電話による通知、パトライト等を起動するなどしてリアルタイムに異常の発生を伝えます。

WAN-WANの特徴

 WAN-WANは異常検出時のアナウンスの他、緊急性が高い場合には監視対象物の電源を遮断するなどの操作も全てスホから可能です。これらの通知や外部制御は一般的な携帯電話通信網である4G回線等でも利用できるため、例えば出張中やWi-Fi環境がない場合も24時間通知可能です。このようにWAN-WANは装置異常の通知にとどまらず、状況をカメラ等で確認・判断し遠隔地から装置の操作ができる点も大きな特徴となっています

紹介動画

WAN-WAN紹介(技術研究会より)
真空ポンプの停止を通知する
Wi-Fiが整備されていない環境でもLoRa無線を使って通知する
介護用の徘徊防止マットを利用し入退室管理にも利用可能(ログも残ります)
実験機器の冷却水等からの漏水を検出し通知
分子研クリーンルーム内の清浄度が悪化したことをリアルタイムで通知
2023年度機器・分析技術研究会での発表の様子(大阪大学)